「レジリエンス」が遺伝するとしたら、こんな逆境は何ともないと思える。いまこそ両親や祖父母に感謝しよう。

先祖代々の墓 レジリエンスing

「レジリエンスの焙煎士」ホリシンです。

今回は知らないうちに発揮されているあなたの「レジリエンス」についてです。

自分の「レジリエンス」はどこからきたか考えてみる

いま逆境の真っただ中にいる人も、やっと乗り越えたと思える人も、そこで自分の「レジリエンス」が発揮されていたことには気づいていないのではないでしょうか。

「レジリエンス」の定義は100以上あると言われていますが、一般的には「精神的回復力」と訳されることが多く、特に「困難な状況に適応する能力」としていまも研究が進められています。

私は長い人生の中でで何度も困難に出合い、その都度なんとか乗り越えてきました。

ではこの「レジリエンス」はいつ私の心に芽生え、私を支えてくれるようになったのでしょうか。

答えは、「母からの遺伝」でした。

 

「レジリエンス」は遺伝するのか?

『えー、「レジリエンス」は遺伝するの?』と思った方が多いと思いますが、実は心理学や神経科学の分野で「レジリエンス」が遺伝する可能性についての研究はされています。

先祖の力を借りられるかもしれない

私の「レジリエンス」の師匠である平野真理先生(お茶の水女子大准教授)は、「レジリエンス」は「資質的要因」と「獲得的要因」から構成されるという独自の研究から「二次元レジリエンス要因尺度」を開発しています。

レジリエンスの心理学

つまり「資質的要因」は先天的な特性や気質に関する要素を指すため、遺伝的な影響が考慮されているとも解釈できます。

さらにある研究では、遺伝子レベルでストレス耐性に影響を与える要因があるとされ、例えば「BDNF」などの遺伝子が、ストレスやトラウマからの回復力に関与していることが一部で指摘されています。

また、両親や祖父母の生き方や考え方が、家庭環境を通じて学習され、世代を超えて「心理的資本」として受け継がれるという見方もあるようです。

「レジリエンス」はもちろんすべてが先天的なものではなく、後天的に培われる要素も大きいですが、もし自分の中に多少なりとも「レジリエンス」が遺伝的に受け継がれているとしたら、私たちは「先祖の力」を借りて、どんな困難にも立ち向かえるのではないでしょうか。

スポーツ選手の親や祖父母から受け継がれた「レジリエンス」

スポーツ界には、両親や祖父母の忍耐力や困難を乗り越える力を受け継ぎ、自らも逆境を跳ね返して成功した選手が多くいます。

例えば、水泳の池江璃花子選手は小さいころに両親が離婚し、お母さんは幼児教育の会社で働きながら女手一つで3人の子どもを育て上げました。

競泳選手

この母のメンタルの強さが、突然の病魔にも負けずにオリンピック出場を成し得た池江選手の「レジリエンス」の源泉だったかもしれません。

また、ドジャースの大谷翔平選手は、元社会人野球選手の父と元バドミントン選手の母というスポーツ一家に生まれ、努力と忍耐を日常的に学ぶ環境にありました。

ドジャース帽子

彼の揺るがない鋼のメンタルは、まさに両親から受け継がれた「レジリエンス」の表れではないでしょうか。

母の「レジリエンス」に感謝

私自身は母の「レジリエンス」を受け継いだと強く感じています。

私の母は33歳の時に夫(私の父)を白血病で亡くし、それからまだ4歳だった私を女手一つで育てました。

狭い都営住宅に住みながら、洋裁教室の仕事でなんとか生計を立て、私を大学まで行かせ真っ当な大人に育て上げることに全力を尽くしてくれました。

この間には父方の親戚との確執や経済的な問題など苦境は多々あったと思います。

いまはそんな母の苦悩に気づかないまま、のほほんと脛をかじり続けた自分をどやしつけたい気持ちです。

そしてこうした人知れぬ苦労を乗り越えた母は、私が就職し、結婚し、子ども(孫)ができた頃からは、やっと自分の人生を楽しむようになりました。

山登りをしたり、歌舞伎を見に行ったり、カルチャー講座に参加したりと、新しいことに挑戦する姿勢は最後まで変わりませんでした。

ハイキングコースマップ

実はこんな母のポジティブな行動も、母の没後にいただいた多くの方からのお手紙によって知りました。中には母を「人生の師匠」と言ってくださる方もいました。

この母の生き方をいま振り返ると、まさに「レジリエンス」満載の人生でした。

そして、母が99歳10ヶ月で亡くなったとき、「もっと親孝行すればよかった」という後悔とともに、私はこの母の「レジリエンス」を受け継いでいたからこそこれまでの様々な苦境を乗り越えてこれたのだと感謝の気持ちと一緒に涙が溢れました。

自分に受け継がれた「レジリエンス」を意識することの効果

社会に出れば誰でも様々な試練に遭遇しますが、私は広告会社でのキャリアの中で一度大きな挫折を経験しました。

入社時には希望していた通りにクリエイティブ部門に配属されましたが、それから10年間思うように成果を上げられず、周囲のアドバイスもあり営業部門への異動を余儀なくされました。

必死に考える

さすがにこの時は会社を辞めようかと思うほど落ち込みました。

この歳で「クリエイティブの落伍者」と言うレッテルを貼られたまま、また一から仕事を覚えるのか、と情けない気持ちで一杯でした。

しかしその後、大学の体育会での辛い経験を思い出したり、また新しい上司の温かい励ましもあり、数か月で立ち直ることができたのです。

このとき初めて自分の中に「レジリエンス」があることを強く実感しました。

「なんかオレって、メンタル強いかも・・・」

もちろん「レジリエンス」という言葉も概念も知りませんでしたが、そんなメンタルの強さを持っていることに気づいたのです。

いま思えば母の「レジリエンス」をしっかりと受け継ぎ、発揮していたということでしょう。

それ以来、多少の困難があっても「これくらいは乗り越えられる」と自分を信じられるようになり、大きなトラブルにも動じずに対応できるようになったのです。

ここで重要なのは、「自分には親や祖父母から受け継いだ強いレジリエンスがある」と意識すること です。

この自己認識があるだけで、困難や失敗に直面したときに深く落ち込むことなくすぐに立ち直り、次の行動を起こせるようになるのです。

未来へ受け継がれる「レジリエンス」

さらに、自分の「レジリエンス」が子どもや孫にも受け継がれると考えたら、「いまここでくすぶっている場合ではない」と思えてきます。

私には娘が二人おり、それぞれ育児と仕事の両立に奮闘しています。

上の娘は、9歳の息子と5歳の娘を育てながらキャリアを築いており、両方の忙しさにイライラすることも多いようです。

リモートワーク中のママと娘

特に9歳の息子は気性が激しく、周囲と衝突しやすい性格で、両親は手を焼いているようです。

そんなとき、いまの私なら『君たちには、おばあちゃん(私の母)の「レジリエンス」が受け継がれている』と励ますことができます。

そして、自分自身も「彼らに強いメンタルを見せ続けなければならない」と思うことで、自分の「心理的資本」をアップデートできます。

まとめ:「レジリエンス」は世代を超えてつながる

家系図

「レジリエンス」は遺伝的な要素と環境要因の両方で形成されています。

スポーツ選手の中には、親や祖父母から受け継いだ「レジリエンス」を発揮し、成功を収めた人が多くいます。

自分自身の中にも、親や祖父母から受け継いだ「レジリエンス」が存在すると意識することで、困難を乗り越えやすくなるのではないでしょうか。

そしてその「レジリエンス」は、次の世代にも受け継がれていくのです。

もしあなたがいま困難に直面しているなら、ぜひ振り返ってみてください。

あなたの両親や祖父母もかつて厳しい時代を生き抜いてきたはずです。

その強いメンタルが自分の中にも受け継がれていると信じることで、どんな逆境にも立ち向かえるはずです。

そして、あなたの「レジリエンス」が次の世代にも影響を与えるのだと考えれば、前向きに行動する力が湧いてくるでしょう。

(ホリシン)

「レジリエンス」か「リバウンドメンタリティ」か:スポーツ選手に学ぶ逆境の乗り越え方
すぐにミスを取り返したり、辛い下積み時代を乗り越えて大活躍したり、スポーツ選手には驚くような精神力が備わっていますね。ここでは、スポーツ選手のメンタルの強さの違いを整理しながら、私たちが逆境を乗り越えるために活用できる「リバウンドメンタリティ」と「レジリエンス」の概念を紹介します。

 

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