「レジリエンス」か「リバウンドメンタリティ」か:スポーツ選手に学ぶ逆境の乗り越え方

競泳選手 レジリエンスing

「レジリエンスの焙煎士」ホリシンです。

今回は「心理的資本」の一つである「レジリエンス」の捉え方です。

実は「乗り越える」には二通りあるのをご存じですか?

スポーツの世界では、「強いメンタル」が勝敗の鍵を握ると言われています。

例えばゴルフの渋野日向子選手の出現で流行した「バウンスバック」という言葉があります。

ある時期渋野選手は、ボギーの後にバーディーを奪う「バウンスバック率」が断トツでした。

「スマイルシンデレラ」と言われるその笑顔はもちろんですが、失敗をすぐに取り返す選手として人気が出たのです。

そのため渋野選手は「メンタルが強い」「レジリエンスが高い」と評価されることもありました。

バンカーショット

しかし「バウンスバック」は厳密には「リバウンドメンタリティ」と呼ぶべきメンタルマネジメントで、長期的な視点で困難を乗り越える「レジリエンス」とは少し異なります。

一方、白血病から奇跡的なカムバックを遂げた競泳の池江璃花子選手のメンタルは、まさに「レジリエンス」の力が発揮された例といえるでしょう。

ここでは、スポーツ選手のメンタルの強さの違いを整理しながら、私たちが逆境を乗り越えるために活用できる「リバウンドメンタリティ」と「レジリエンス」の概念を紹介します。

「リバウンドメンタリティ」とは何か?

「リバウンドメンタリティ」とは、一時的な失敗やミスの後にすぐに立ち直るスキルを指します。

特にスポーツの試合ではミスを引きずらず、すぐに次のプレーで挽回することが求められます。

例えばバスケットボールでは「リバウンド」というプレーが重要視されます。

オフェンスでもディフェンスでも、シュートがはずれた後にすぐボールを奪い返し次の攻撃につなげるプレーです。

リバウンド

このバスケットボールの「ミスをチャンスに切り替える力」が、精神面でも応用されるようになり「リバウンドメンタリティ」という言葉が使われるようになったと言われています。

私も大学のサッカー部時代、相手に点を取られるとキャプテンが後ろから「切り替え、切り替え」と叫んでいたのを覚えています。(ほとんど毎試合でしたが・・・)

ゴルフの渋野日向子選手が「バウンスバックの女王」と言われるのも、この「リバウンドメンタリティ」の強さによるものです。

ボギーを打っても気持ちを切り替え、すぐにバーディーで取り返す。これは一時的な不調や失敗に対する回復力の高さを示しています。

しかしこのようなメンタルの強さは短期間での競技パフォーマンスには有効ですが、長期的なスランプやキャリアの危機には必ずしも対応できるわけではありません。

そこで重要になるのが、より深いメンタルマネジメントである「レジリエンス」です。

「レジリエンス」とは何か?

「レジリエンス」とは、長期的な逆境やストレスに耐え、成長しながら乗り越える精神力のことです。(「レジリエンス」の定義は100以上あると言われています。)

レジリエンスビルディング

心理学では「精神的回復力」と訳されることが多く、特に困難な状況に適応する能力として研究が進められています。

例えば、池江璃花子選手が白血病を乗り越えて競技復帰を果たしたプロセスには、力強い「レジリエンス」が見られます。

彼女の闘病生活は、単なる短期的な不調ではなく、競技生命すら危ぶまれる長い戦いでした。

入院

そんな中でも彼女は「前を向いてできることを積み重ねる」姿勢を貫き、驚異的な回復力で競技への復帰を果たし東京オリンピックとパリオリンピックに出場しました。

このように「レジリエンス」は一時的なリカバリーではなく、長期的な視点での回復や成長を支える力なのです。

「レジリエンス」の2つのアプローチ

私は「レジリエンス」に10年ほど関わる中で、この「レジリエンス」の概念には大きく2つのアプローチがあると考えています。

  • 臨床的アプローチ:ネガティブな精神状態をニュートラルに戻すことを目的とする。例えば、うつや燃え尽き症候群からの回復を目指す心理療法などがこれに当たる。
  • ポジティブ心理学的アプローチ:健康なメンタルをさらにウェルビーイングに近づけることを目的とする。例えば、スポーツ選手がメンタルトレーニングを行い、より高いパフォーマンスを発揮することを目指すなど。

渋野日向子選手も、単に「バウンスバックが多い」だけでなく、スランプに陥った際に自分のメンタルを立て直し、再び上を目指す力を持っているはずです。

2019年に劇的な全英女子オープン優勝を果たしましたがその後は2021年の国内ツアー優勝以来勝ち星がなく、現在ももがき苦しんでいるように見えます。

この先、何年か振りに渋野選手のあの笑顔が弾けたら、それがまさに「レジリエンス」が発揮されてた証拠です。

「レジリエンス」は「心理的資本」の一つ

「レジリエンス」は、ポジティブ心理学において「心理的資本(PsyCap)」の4つのリソースの一つとされています。他の3つの要素と組み合わせることで、より強いメンタルが形成されます。

  • 「Hope(希望、目標)」:目標に向かって進む意欲
  • 「Efficacy(効力感と自信)」:自分の力でやり遂げられるという自信
  • 「Optimism(現実的な楽観性)」:困難な状況でもポジティブに捉える力
  • 「Resilience(レジリエンス)」:逆境を乗り越え、成長する力

 

「心理的資本」を始めよう!内なる「HERO」に出合うとき
「心理学」と「経営学」の融合から生まれた「心理的資本」を知ろう!最近「心理的資本」(Psychology Capital)という言葉をよく耳にするようになりました。略して「PsyCap」(サイキャップ)とも言われます。「Hope」「Efficacy」「Resilience」「Optimism」の4つのリソースが「心理的資本」の中身です。それぞれの頭文字をとって「HERO」と呼ばれます。「心理的資本」は「心理」という言葉が使われていますが、特に経営学や組織論の分野で見かけることが増えました。「人材マネジメント」や「キャリア形成」に欠かせない概念として注目されています。

 

スポーツ選手の成功には、単なる「リバウンドメンタリティ」だけでなく、これらの「心理的資本」がバランスよく機能していることが推測されます。

例えば、池江璃花子選手は「Resilience」はもちろん「Hope」と「Efficacy」を失わなかったからこそ、苦しい闘病生活を乗り越えられたのではないでしょうか。

逆境を乗り越えるために私たちが学ぶべきこと

スポーツ選手のメンタルマネジメントを学ぶことで、私たちの日常生活にも活かせるヒントが見えてきます。

頭を抱えるビジネスマン

  • 短期的な失敗に対しては「リバウンドメンタリティ」を鍛える:仕事でミスをしてもすぐに気持ちを切り替え、次の行動に移す習慣をつける。
  • 長期的な困難に対しては「レジリエンス」を鍛える:大きな挫折やスランプを経験したときは、目標を見直し小さな成功を積み重ねることで乗り越える。
  • 「心理的資本」を意識してバランスを取る:「Efficacy」や「Optimism」を高めることで、より柔軟な「レジリエンス」を身に付ける。

スポーツ選手は、試合の中で「リバウンドメンタリティ」を発揮しながら、キャリア全体では「レジリエンス」を育んでいます。

私が自分の「レジリエンス」に気づいたとき

私のキャリアの話をしますと、大学卒業後すぐに広告会社に入社し、希望していたクリエイティブ部門でコピーライターを10年間務めました。

しかし結局コピーライターとしては芽が出ず営業部門への異動を余儀なくされ、大きな挫折を経験しました。

一体なんのための10年間だったのか・・・

この時は本気で会社を辞めようかと思うほど落ち込みました。

しかし、あの厳しい体育会での逆境経験や、新しい部門の上司の励ましもあり、次第に立ち直って行きました。

ここで気づいたのが、自分の「レジリエンス」です。

「あれ?オレって意外とメンタル強いかも・・・」

この経験を境に、私は大きく落ち込むことが少なくなりました。

しかしその後も営業職では数えきれないほどのトラブルに直面しました。(私の営業部は周囲から「トラブル部」と呼ばれていたほどです。)

トラブル

しかし、そのたびに「これくらいは何ともない」と考え、すぐに次の一手を打つようになりました。これがたぶん「リバウンドメンタリティ」だった訳です。

『自分の「レジリエンス」に気づき意識的に発揮できるようになると、あとは「リバウンドメンタリティ」だけで人生の荒波を渡っていける。』

これが私が長いキャリアで得た不屈のメンタルマネジメントです。

スポーツの世界だけでなく、ビジネスでもこの二つのメンタルマネジメントの使い分けは役立ちます。

大きな挫折を乗り越える「レジリエンス」と、日々の失敗をすぐに切り替える「リバウンドメンタリティ」をうまく併用することで、恐らくはどんなネガティブな状況も乗り越えられるのです。

みなさんも、目の前の困難に動じない「リバウンドメンタリティ」と、長期的な成長を支える「レジリエンス」を意識しながら、人生の逆境を乗り越えていきましょう。

(ホリシン)

メンタルが弱い人ほど人生がたのしくなる

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