こんにちは。「心理的資本開発指導士(PsyCap Master)」のホリシンです。
今回は「アドラー心理学」と「心理的資本」の間柄についてです。
他人の目を気にすると、ポジティブな行動がとれなくなる
私が最初に「アドラー心理学」と接したのは「アドラーおばあちゃん」という本でした。
サラーリーマン生活が終わり、ライフワーク的に「レジリエンス」に取り組み出しましたが、当然のことながら「ポジティブ心理学」の領域へ、さらに結果として「アドラー心理学」にも足を踏み入れることになりました。
それだけ「アドラー心理学」は「ポジティブ心理学」と「レジリエンス」と関係が深かったということです。
そしてこちらもアドラーの著書ではありませんが、「嫌われる勇気」からは仕事だけでなく人生そのものに大きなヒントをもらいました。
しかし残念なことに私にとってはここにたどり着くまでに時間が掛かりすぎました。
「人は人、自分は自分」、実は簡単なことだったのにあの頃はこう考えられなかったんですね。
「他人からどう思われようと気にすることはない。それは他人の課題だから。」
これは「アドラー心理学」でよく知られる「課題の分離」の考え方です。
私たちは、他人が自分をどう評価するかをコントロールできません。
にもかかわらず、仕事やキャリアにおいて「上司にどう思われるか」「同僚と比べてどうか」「失敗したら笑われるのではないか」などなど、他人の目を気にして行動を決めがちですね。
私自身、広告会社での長いキャリアの中で、結果的にサーバント型のリーダーシップを取ってきた理由もここにありました。
クライアントの要求ととチームメンバーの意志をすり合わせて落としどころを探る調整役に徹することでそれなりには評価されましたが、これは実は他人の評価を気にするあまり「自分がどうしたいか」という軸を持たず、「周りにどう思われたいか」という尺度だけで行動し、結果的にしなければならなかった挑戦を避けていたに過ぎません。
もしこの頃に「アドラー心理学」と「心理的資本(PsyCap)」の考え方を取り入れていれば、他人の評価に縛られることなく自分の信念を軸にしたもっと強いリーダーシップを発揮できたのではないかといまは後悔しています。
ここでは、「アドラー心理学」×「心理的資本」の考え方とそこから得られる効果について考察します。
「アドラー心理学」とは? 「自分の人生を主体的に生きる」ための考え方
「アドラー心理学」は、オーストリアの心理学者 アルフレッド・アドラー(1870-1937)が提唱した心理学の体系で「勇気の心理学」とも呼ばれます。
彼はフロイトやユングと並ぶ三大心理学者の一人ですが、他の心理学とは異なり、「人間は過去の経験や環境に縛られるのではなく、自らの意思で人生を選択できる」と考えました。
「アドラー心理学」は、個人の主体性・対人関係・貢献意識を重視し、特に「人間は対人関係の中で生きている」という考え方が特徴的です。
ここでは、キャリアに応用しやすい「アドラー心理学」の基本概念を紹介します。
「課題の分離 」:「他人の評価は気にしない」生き方
「アドラー心理学」の代表的な概念が「課題の分離」です。
これは、「自分の課題」と「他人の課題」を明確に分けることで、不要なストレスを減らし、自分の人生に集中するという考え方です。
例えば、仕事において「上司にどう思われるか」を気にしている人は、「上司が自分を評価するかどうか」という「他人の課題」に踏み込んでしまっています。
しかし「アドラー心理学」では「自分が努力するかどうか」は自分の課題ですが、「上司がそれをどう評価するか」は上司の課題であり、自分ではコントロールできないと考えます。
< 「課題の分離」の実践方法>
- 「この悩みは自分の課題か? それとも他人の課題か?」を考える。
- 他人の評価や感情は自分でコントロールできないと理解する。
- 自分の努力や行動に集中し、他人の反応に左右されないようにする。
この考え方を取り入れると「他人の目を気にせず、自分のやりたいことに集中できる」ようになります。
「 目的論 」:「過去ではなく未来を見る」思考法
多くの心理学は「過去のトラウマや経験が現在の行動を決定する」と考えます(フロイトの「原因論」など)。
しかし「アドラー心理学」はこれとは異なり、「人は過去の影響を受けるのではなく、未来の目的によって行動を決める」とする「目的論」を提唱しました。
例えば、「私は自信がないから積極的になれない」と思っている人がいるとします。「原因論」では、「過去に失敗した経験があるから、自信が持てない」と説明します。
しかし「アドラー心理学」では、実は「積極的に行動すると批判されるかもしれない」という不安があるため「消極的な自分でいることを選んでいる」と考えます。
つまり、過去ではなく「自分が未来にどうなりたいか」が重要なのです。
<「目的論」の実践方法>
- 「なぜこの行動を選んでいるのか?」を自問する。
- 過去のせいにせず、「これからどうしたいか?」を考える。
- キャリアの目標を明確にし、そのために何ができるかを決める。
この考え方を身につけると「過去に縛られず、未来志向で行動できる」ようになります。
「劣等感」と「優越性」の追求 :「他人と比較しない」マインドセット
アドラーは、人間が成長する原動力として「劣等感」を重要視しました。
「劣等感」とは、自分の弱さや力不足を感じることですが、これ自体は決して悪いものではありません。
むしろ「劣等感があるからこそ、人は努力して成長しようとする」のです。
しかし、問題なのは「劣等コンプレックス」に陥ることです。
これは「劣等感」を必要以上に気にして「どうせ自分なんか…」と行動を諦めたり、「他人より優れていなければ意味がない」と極端に優越性を求めることを指します。
キャリアにおいても、「同期より遅れている」「同僚より評価されていない」といった「劣等感」に苦しむことは多いでしょう。
しかし「アドラー心理学」では、「他人と比較するのではなく、昨日の自分と比較する」ことを推奨します。
<「劣等感」を成長に活かす方法>
- 「昨日の自分」と比較し、小さな成長を意識する。
- 他人との競争ではなく、「自分なりの目標」を持つ。
- 「完璧でなくてもいい」と考え、挑戦することを大切にする。
この考え方を持つことで「他人と比べることで生まれる焦りやストレスから解放される」ようになります。
「共同体感覚」:「自分のため」ではなく「誰かのため」に働くという考え方
「アドラー心理学」では、「人間の幸福は、共同体の中で貢献を感じることによって得られる」と考えます。これを「共同体感覚」と言います。
例えば、「この仕事を通じて誰の役に立てるか?」と考えることで、仕事のやりがいや満足感が大きく変わります。
「昇進したい」「評価されたい」といった自己中心的な目的ではなく、誰かの役に立つことを意識することで、より充実したキャリアを築けるのです。
<「 共同体感覚」を高める方法>
- 「この仕事が誰にどんな価値を提供しているか」を考える。
- 「他人の成功を喜ぶ」姿勢を持つ。
- 「競争」ではなく、「協力」に目を向ける。
この考え方を取り入れると、「キャリアの軸が明確になり、仕事のやりがいが増す」ようになります。
「アドラー心理学」×「心理的資本」で「他人を気にしない自律的キャリア」を築く
「アドラー心理学」は「キャリア形成」にとって多くの示唆を与えてくれます。さらにそこに「心理的資本」を掛け合わせることによってより力強い「自律的キャリア形成」の道が拓かれます。
「心理的資本(PsyCap)」とは?
「心理的資本」とは、「Hope(希望、目標)」「Efficacy(効力感と自信)」「Resilience(乗り越える力)」「Optimism(現実的な楽観性)」の4つの要素からなる心理的な強みです。
4つのリソースの頭文字をとって「HERO」と呼ばれます。

他者の目を気にせず、自分の道を歩むためには、この「心理的資本=HERO」を活用することが有効です。
- 「Hope」:目標に向かって進む力。キャリアの中で「自分はどうなりたいか?」を明確にし、それに向けて行動する。
- 「Efficacy」:「自分にはできる」と信じる力。成功体験を積み重ね、小さな達成を意識することで育てられる。
- 「Resilience」:困難から立ち直る力。批判や失敗を「成長の機会」と捉えることで鍛えられる。
- 「Optimism」:柔軟で現実的な楽観性。ポジティブな未来を信じる力。
もし私があの当時「アドラー心理学」に加えて、この「心理的資本=HERO」を意識することができたら「他人の評価よりも、自分が納得できる仕事をする」ことにマインドシフトできたでしょう。
特に、「失敗してもいい」と楽観的に考えられるようになって様々な挑戦に取り組んだはずです。
「心理的資本(PsyCap)」の4要素「HERO」を高めることで、「アドラー心理学」の考え方を実践しやすくなるのではないでしょうか。
「課題の分離」 × 「Efficacy」(効力感と自信)
「アドラー心理学」では、「他人の評価は他人の課題であり、自分の課題ではない」と考えます。しかし、他人の評価を気にせず行動するには、「自分はできる」という確信(「Efficacy」)が必要です。
<「心理的資本」の「Efficacy」を活かした実践方法>
- 小さな成功体験を積み重ねて、「自分にはできる」という感覚を養う。
- 他人の評価ではなく、「自分の成長」に焦点を当てる。
➡ 「Efficacy」を高めることで、他者の評価に左右されずに「課題の分離」を実践できる。
「目的論 」× 「Hope」「Optimism」(目標と楽観性)
アドラーは「人間の行動は過去ではなく、未来の目的によって決まる(「目的論」)」と考えました。
しかし、未来に向かって行動するには「この先、良くなる」と信じる力が必要です。これは「心理的資本」の「Hope」と「Optimism」に該当します。
<「心理的資本」の「Hope」と「Optimism」を活かした実践方法>
- 「これからどうなりたいか?」を明確にし、目標を設定する(「Hope」)。
- 失敗しても「きっと大丈夫」と思える楽観的な視点(「Optimism」)を持つ。
➡ 「Hope」と「Optimism」を持つことで、過去に縛られず未来志向で行動できる。
「 劣等感」の克服 × 「Resilience」(乗り越える力)
アドラーは、「劣等感は成長の原動力になるが、劣等コンプレックスに陥ると自己否定に繋がる」と言っています。
失敗や劣等感に負けず前向きに進むためには、「心理的資本」の「Resilience」が必要です。
<「心理的資本」の「Resilience」を活かした実践方法>
- 失敗しても「この経験をどう成長に活かせるか?」と考える。
- 失敗した自分を責めるのではなく、次に向けた行動を意識する。
➡ 「Resilience」を発揮することで、「劣等感」に振り回されず成長につなげることができる。
「共同体感覚」 × 「Hope」「Efficacy」(目標と効力感)
「アドラー心理学」の「共同体感覚」は、「他者への貢献を感じることで幸福を得る」考え方です。
しかし「自分には価値がある」「他人に貢献できる」という感覚がなければ、「共同体感覚」を持つのは難しくなります。
<「心理的資本」の「Hope」と「Efficacy」を活かした実践方法>
- 「自分の仕事が誰かの役に立っている」と実感する(「Hope」)。
- 他人に貢献できる自分を信じる(「Efficacy」)。
➡ 「心理的資本」の「Hope」と「Efficacy」を高めることで、貢献意識が強まり仕事や人間関係に充実感を得られる。
結論:「心理的資本」を高めることで、「アドラー心理学」を実践しやすくなる
「アドラー心理学」は「自分の力で人生を切り開く」という考え方ですが、その実践には心理的な強さが必要です。
「心理的資本(PsyCap)」の4要素「HERO」を意識して日々アップデートすることで、「アドラー心理学」の考え方をよりスムーズに実践できるようになります。
➡ 「心理的資本」(HERO)を高めることが、「アドラー心理学」を実生活に取り入れるための強力なサポートになる
おわりに:他人を気にしないキャリアを歩もう
実際に「他人の評価を気にしない」ことで目に見える効果が実感できます。
・ストレスが減る 他人の期待に応えようとするプレッシャーがなくなり、精神的に楽になる。
・挑戦しやすくなる 「失敗したらどう思われるか」ではなく、「自分がやりたいかどうか」で判断するため、新しいチャレンジがしやすくなる。
・ キャリアの満足度が上がる 他人基準ではなく、自分の価値観に基づいたキャリアを歩むことで自律的なキャリア形成ができる。
他人の目を気にするあまり、言動が委縮してしまう経験は誰にもあるものです。
しかし、それに縛られすぎると、自分らしいキャリアを築くことができません。
「アドラー心理学」の「課題の分離」と、「心理的資本」の「HERO」を意識することだけでも、他人の評価に左右されないキャリアを作ることができるはずです。
これからの時代、キャリアの選択肢はますます多様になります。
他人ではなく「自分の価値観」を軸に、自由にキャリアを築いていくことが大事ですね。
(ホリシン)
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