上司はZ世代を理解することから始めよう
近年、企業の人事部門や管理職が口を揃えて挙げる課題が「Z世代とのコミュニケーション」です。
1990年代後半から2010年代初頭に生まれたこの世代は、「キャリアに保守的」「無理をしない」「丁寧な指導を求める」「承認欲求が強い」などの特徴を持つとされています。
その結果、上司に言われたこと以上の行動を取らなかったり、「無駄だ」と思う業務を避けたりする傾向が見られることから、職場で「扱いにくい」と感じられることが少なくありません。
しかし、この「扱いにくさ」は一方的な視点ではないでしょうか?
Z世代の価値観や行動には、現代社会が求める新しい働き方のヒントが隠されています。
そこで鍵となるのが「心理的資本」という考え方です。
今回は「心理的資本」を活用してZ世代とのコミュニケーションを円滑にし、モチベーションを引き出す方法を考えてみます。
「心理的資本」とは? 〜4つの力で心を育てる〜
「心理的資本」とは、アメリカの経営学者フレッド・ルーサンスが提唱した概念で、「こころの資本」(2020年/中央経済社)という本で日本に紹介されました。
「心理的資本」は、以下の4つの要素(リソース)で構成されています。
- Hope(希望、目標):目標に向かって進み続ける力
- Efficacy(効力感、自信):自分ならできるという自信
- Resilience(レジリエンス):逆境に立ち向かい、立ち直る力
- Optimism(現実的な楽観力):物事を前向きに捉える思考
この4つの頭文字をとって「HERO」と呼ばれます。
「心理的資本」は、ビジネスパフォーマンスや仕事満足度を向上させる重要な要素であり、特にZ世代のように「自信が持てない」「失敗を恐れる」若い世代のメンタルリセットに対して有効と言われています。
Z世代と「心理的資本」:相性の良さを活かそう
Z世代が持つ特徴を「心理的資本」の文脈で見ると、意外なほど相性が良いことが分かります。
キャリアに保守的 → Hopeを与えるアプローチ
Z世代がキャリアに対して慎重なのは、不確実な社会情勢や競争激化によるものです。
この「保守的」という傾向は裏を返せば、「目標を明確にしたい」「安心感を持ちたい」というニーズがあるとも言えます。
「心理的資本」の「Hope」を育てることで、目標を小さく設定しながら段階的に達成する喜びを教えましょう。
無理をしない → Efficacyを高めるサポート
Z世代は「頑張りすぎない」スタンスを取る傾向がありますが、これは単に怠けているわけではありません。
むしろ効率的で賢い方法を追求しているとも言えます。
この場合、彼らのスキルや能力を認め、「自分にもできる」と思えるような成功体験を積ませることが重要です。
丁寧な指導を求める → Resilienceを育てる関係づくり
指導を受ける際に「なぜその仕事をするのか」を丁寧に説明されると、Z世代は安心して取り組む傾向があります。
ここで、失敗や挫折を許容する環境を提供し、逆境に立ち向かう力(レジリエンス)を徐々に高めていきましょう。
承認欲求が強い → 楽観的視点を促すコミュニケーション
SNSの普及などもあり、Z世代は「承認欲求」が高いと言われます。
これを否定するのではなく、具体的な成果や努力を称賛し、ポジティブな視点を強化することで、楽観的に行動できるよう促しましょう。
「心理的資本」を活用した具体的なコミュニケーション法
日々のコミュニケーションに「心理的資本」のエッセンスを加えることで、これからの行動がより具体的になります。
目標設定を共に考える(Hopeを育む)
- 小さな目標を設定し、成功体験を積み重ねる
- ゴールに到達した際は明確に称賛し、次のステップに進む楽しさを伝える
フィードバックは具体的かつポジティブに(Efficacy)を強める)
- 「あなたはここが良かった」という具体的なフィードバックを心掛ける
- 改善点もポジティブな言葉で伝える
挫折を恐れさせない環境づくり(Resilienceを高める)
- 失敗を許容する風土を作る
- 具体的な対処法をアドバイスし、前向きな学びを得られるようにする
承認と感謝を表現する(楽観的な思考を促す)
- 日常的に「ありがとう」「助かった」と感謝を伝える
- 努力や工夫を見逃さずに称賛する
私の経験:「心理的資本セミナー」での気づき
先日、あるIT会社で3年目社員向けに「心理的資本セミナー」を実施しました。
私の昭和テイストの冗談が全く通じず泣きそうになりましたが(笑)、それ以上に感じたのは、彼らの真剣さと吸収力の高さです。
「心理的資本」の潜在力に共感してくれる部分も多く、特に「Hopeを持つことの大切さ」「失敗を怖がらないこと」に強い反応がありました。
このセミナーを通じて感じたのは、Z世代が「扱いにくい」と感じられる背景には、彼らなりの不安や葛藤があるということ。
その不安を「心理的資本」で補うアプローチは非常に効果的だと実感しました。
まとめ:「心理的資本」でZ世代との架け橋を作ろう
「扱いにくい」と感じる相手は、実は新しい視点を教えてくれる存在でもあります。
Z世代の価値観を否定するのではなく、「心理的資本」の4つの要素を活用してポジティブな関係を築いていきましょう。
「心理的資本」は、単なる理論ではなく、日々の職場で実践できるメンタルのツールです。
「心理的資本」を活用することで、Z世代とのギャップを埋め、職場全体のコミュニケーションを向上させる第一歩になるはずです。
(ホリシン)
↓「心理的資本」の概要はこちら↓
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