できる営業は「心理的資本」を使っている
私が思うに、営業の仕事は人と人とのつながり=「社会関係資本」が基本です。
そして、周囲との信頼関係を築きながら成果を出すには、「社会関係資本」だけでなく「心の力」、つまり「心理的資本」が鍵となります。
私は広告会社で営業として、同じクライアントを25年間担当し続けるという珍しいキャリアを経験しました。
いま思うとその25年の間に、当時は知らなかった「心理的資本」という「心の力」を自分で育んでいたと言うことかもしれません。
「心理的資本」を「心のエンジン」にすることで、どれほど前向きに仕事に取り組めて、さらには仕事を楽しくするかということを、若手営業のみなさんにお伝えしたいと思います。
「心理的資本」が営業に必要な理由
仕事で成果を上げるための個人の資源として「人的資本」(スキルや経験)と「社会関係資本」(人的ネットワーク)はよく知られています。
しかし営業職は、特にストレスフルな場面が多い仕事です。
失注やトラブル対応、クライアントとの調整など、心が挫けそうになることもあるでしょう。
こうしたメンタルマネジメントが求められる営業職にはもう一つの資本である、「心理的資本」という「心のエネルギー」を発揮することが重要になります。
「心理的資本」は、「Efficacy」(効力感、自信)、「Optimism」(現実的な楽観性)、「Hope」(希望、目標)、「Resilience」(乗り越える力)の4つから成り立っています。
「Efficacy」自己効力感と自分を信じる力
特にトラブルや挫折の多い営業職には、「自分なら乗り越えられる」と信じる力が必要です。
私も営業に転じた当初は「自分に向いているのか」と不安を感じていました。
しかし、会社のサッカー部で私の性格をよく知っていた営業部長が「お前なら大丈夫だ」と言ってくれたことが勇気となり、挑戦する気持ちが芽生えました。
また担当した当初にあるクライアントから「いつか営業部長になって」と言われたことが25年続ける原動力になりました。
「Optimism」 楽観性とユーモアでピンチを切り抜ける
私が「トラブル部長」と呼ばれていた頃のエピソードのひとつです。
クライアント主催のゴルフイベント会場の上空に突然競合会社の気球船が飛んできたことがありました。
そのとき、クライアントのお偉いさんが「おい、あの気球を打ち落とせ!」と本気で怒ったのです。
私はとっさに「わかりました。ピッチングのフルショットですね!」と冗談で返しました。
その場の空気が一気に和らぎ、クライアントも苦笑いしながら「まあ、君の腕ではちょっと無理だな。」と矛を収めてくれました。
このようなユーモアや楽観性は、関係を良好に保つうえで非常に重要です。
「Hope」希望と目標を持って動く力
同じクライアントを25年間担当するということは、仕事のやり方がマンネリになったり、部下が私の言動を気にしすぎて自律的に動かなくなるというマイナス面も生まれました。
あるクライアントが10年間海外赴任をして戻ってきたらまだ私が担当だったと驚いて「お宅の会社、進歩がないなあ」と冗談交じりに言ったこともありました。
こんな向かい風も感じながら、私は常に「このクライアントの期待を超える」という目標を持ち続けました。
この目標が、日々の行動やモチベーションを支えてくれたのです。
「Hope」を持つことで、長期間にわたる仕事も充実感を得られるようになります
「Resilience」レジリエンス:逆境を乗り越える力
営業の現場では、トラブルや想定外の逆境は避けられません。
私も難しい調整や謝罪の連続で何度も眠れない日々を経験しました。
私の率いる営業部はあまりのトラブルの多さに「トラブル部」と呼ばれたほどです。
しかしここで重要なのは、一度失敗してもあきらめずに「次にどうするか」と前向きに考え立ち直る力です。
大きなミスがあった際にも、クライアントと築いた信頼関係を「社会関係資本」として生かし、すぐにポジティブに動き始めることができるのは「心理的資本」の力です。
ぶつからない営業術:人間関係の極意
私が25年間同じクライアントを担当できた理由は、クライアントを含め社内外の人と極力ぶつからない「クッション営業」を心がけたからだと思います。
昔ある会社の社訓に「摩擦を恐れるな」という言葉がありましたが、私のモットーは「摩擦を起こさない」でした。
自分が「クッション」になって、相手の怒りやお互いの行き違いを吸収するという調整型の営業術です。
ぶつかることを恐れずに攻撃的に暴れるのも営業の一つのスタイルだと思いますが、私のようにトラブル時も、感情的になるのではなく、冷静に相手の立場を理解しつつ話を進める「クッション営業」も営業術の一つだと思います。
信頼関係を築くには時間がかかる
営業に異動した当時は、クライアントもほとんど心を開いてくれませんでした。
しかもクリエイティブ出身ということで営業としての「人的資本」も「社会関係資本」もほどんどない、いわば「新人扱い」だったと思います。
しかしここからがスタートだと自分を信じ(Efficacy)、負けるもんか(Resilience)と、明るい将来を心に描きながら(Hope、Optimism)少しずつクライアントとの距離を縮めて行きました。
いま思えばまさに「心理的資本」を発揮していたと思います。
やはり時間をかけて誠実に向き合えば、相手も徐々に心を開いてくれます。
そして長く付き合ったクライアントとは、気心が通じ、トラブルもユーモアで切り抜けられるようになります。
若手営業へのメッセージ:「心理的資本」を育む方法
営業を始めたばかりの若手のみなさんには、「心理的資本」を意識して活用することをおすすめします。
- 「Efficacy」自己効力感と自信を高める
自信がないときは、小さな成功体験を積み重ねることが効果的です。一歩ずつ進むことで、大きな自信につながります。 - 「Optimism」現実的な楽観性を持つ
困難に直面したとき、「これを乗り越えたら成長できる」と前向きに考える習慣をつけましょう。 - 「Hope」希望と目標を持ち続ける
短期的な目標と長期的な目標を立て、それを楽しみながら達成していく姿勢が役に立ちます。 - 「Resilience」レジリエンスを鍛える
失敗や批判を受けても、あまり気にしすぎないこと。「失敗は次の成功の糧」になるという思考の転換が重要です。
まとめ
営業という仕事は、クリエイティブやマーケティングなどの専門職とは違う力を求められますが、本質は人との信頼関係を築くことにあります。
「心理的資本」を活用すれば、困難な状況でも成長を続け、自分らしい営業スタイルを築くことができます。
若手営業のみなさんには、常に「心理的資本」を意識して、自分の可能性を広げてほしいと思います。
(ホリシン)
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