管理職は「支配者」になってはいけない
最近「サーバントリーダーシップ」という言葉を耳にすることが増えました。
リーダーが部下を支え、チームに奉仕する姿勢を持ちながらチームを導くこのスタイルは、特に現代の多様化する職場において重要なマネジメント手法だとされています。
振り返ると、私の管理職時代のスタンスは、まさにこの「サーバントリーダーシップ」に近いものでした。
当時はその言葉を知りませんでしたが、部員一人ひとりに大きな裁量を持たせつつ、何かあれば自分が責任を取るというマネジメントスタイルを実践していました。
その一方で、クライアントの上層部とは密にコミュニケーションを取り、トラブルが発生しそうな兆候を察知したら迅速に動いて事前に回避するよう努めていました。
いまでは、このリーダーシップスタイルを効果的に機能させるには、リーダー自身の「心理的資本」を活用すること、そしてチーム全体に「心理的資本マネジメント」を浸透させることが欠かせないと感じています。
ここでははその実践方法についてご紹介します。
「サーバントリーダーシップ」と「心理的資本」の関係
「サーバントリーダーシップ」は、リーダーが「支配する」のではなく「支える」ことを重視します。
そのためには、リーダー自身が内面に強いエネルギーを持つ必要があります。
ここで重要になるのが、「心理的資本」です。
心理的資本は、「Hope(希望、目標)」、「Efficacy(効力感、自信)」「Resilience(乗り越える力)」、「Optimism(現実的な楽観力)」の4つの力(リソース)から構成されています。
4つの頭文字をとって「HERO」と呼ばれます。
この「HERO」を活用することで、リーダーは以下のような行動を実現できます。
「Hope(希望、目標)」:未来へのビジョンを共有する
サーバントリーダーは、部下の目標を支援するだけでなく、組織としてのビジョンを明確にし、それを共有する必要があります。
例えば、私が営業部長を務めていた頃、部の利益が営業局の中で最低という状況に陥ったときでも、「この部は必ずトップに立てる」というビジョンを示し続けました。
「Efficacy(効力感、自信)」:チームメンバーの成長を信じる
部員に裁量を持たせるということは、彼らの能力を信じることでもあります。
しかし、リーダーとしてはただ信じるだけではなく、適切なフィードバックやサポートを提供し続ける必要があります。
この「自分たちにはできる」という感覚を育むことが、チームの成功につながります。
「Resilience(乗り越える力):失敗から立ち直る
リーダーは、チームが壁にぶつかったときにそのストレスを吸収し、回復力を示すことが求められます。
たとえ部下が失敗しても、それを糧に次の挑戦へ向かわせる環境を作ることが重要です。
「Optimism(現実的な楽観性)」:ポジティブな空気を作る
サーバントリーダーは、部下の前でどんな状況でも明るさを失わないことが大切です。
ユーモアを交えたコミュニケーションは、部員との距離を縮めるだけでなく、組織全体の雰囲気をポジティブに保ちます。
チーム全体に「心理的資本」を浸透させる「心理的資本マネジメント」
リーダー自身が「心理的資本」を活用するだけでなく、チーム全体にもそのエッセンスを広げることが必要です。
それが「心理的資本マネジメント」です。
チームのビジョンを明確にする
希望を持たせるためには、チーム全員が同じ方向を向く必要があります。
例えば、私が「責任は自分が取るから自由にチャレンジしよう」と言い続けた結果、部員たちは「トップを目指す」という共通の目標を持てるようになりました。
メンバーの成功体験を共有する
「Efficacy」を高めるためには、小さな成功体験を共有し、それを称賛する文化を作ることが重要です。
成功の基準を多様化し、誰もが貢献を実感できるようにすることがポイントです。
ストレスを軽減する環境を整える
回復力を育むには、失敗を許容する雰囲気を作ることが不可欠です。
私が頻繁に部員と飲み会を開いたのも、ストレス発散や信頼関係の構築を目的としていました。
日常にユーモアを取り入れる
「Optimism」を育むには、職場で笑いが生まれる瞬間を増やすことが効果的です。
どんなに厳しい状況でも冗談を言い、部下の笑顔を引き出すことは、サーバントリーダーの重要な役割です。
「サーバントリーダーシップ」と「心理的資本」の相乗効果
「サーバントリーダーシップ」を実践する際、「心理的資本」の活用は相乗効果を生み出します。
「Hope」「Efficacy」「Resilience」「Optimism」を意識して育むことで、リーダー自身も成長し、チーム全体が強くなっていきます。
私自身、営業での経験から、部下を信じ、支えることの重要性を学びました。
そして、そのプロセスで得た教訓は、「早急な結果を求めず、じっくりとチームの基盤を作る」ことでした。
このアプローチこそが、長期的な成功の鍵であり、「サーバントリーダーシップ」の真髄だと感じます。
まとめ
「サーバントリーダーシップ」は、現代の職場で求められる理想的なリーダーシップの形です。
しかし、その実践にはリーダー自身の「心理的資本」の活用と、チーム全体への「心理的資本マネジメント」の浸透が欠かせません。
管理職として、部下を支えながら、チーム全体を成長させるこのスタイルをぜひ取り入れてみてください。
そして、焦らず時間をかけて、ポジティブな職場環境を築いていきましょう。
それが、組織としての持続的な成功につながると信じています。
(ホリシン)
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