転職をその時の「感情」で決めてはいけない:「心理的資本」で「思考」をチェックしたか?

スーツの女性 心理的資本ing

転職を考えるとき、多くの人は「いまの職場が嫌だ」「上司に腹が立った」「評価されない」といったその時のネガティブな感情に突き動かされがちです。

しかし、その決断は本当に正しいのでしょうか?

一時の「感情」に流されて転職を決めてしまうと、後になって「思ったより条件が悪かった」「前職のほうがよかった」と後悔するケースが少なくありません。

一方で、「思考」に基づいて判断した転職は、長期的に見ても納得感があり、後悔しにくいものになります。

では、どのように「感情」と「思考」を切り分け、冷静に転職を判断すればよいのでしょうか?

そこで役立つのが、「心理的資本(PsyCap)」の視点です。

管理職になりたくない、だから転職?キャリア迷子にならないためのメンタルとは?
かつての私は全く逆で、「早く部長にならなければ」と焦っていた時期がありました。しかしいま長いキャリアを振り返ると、そこまで焦る必要は全くなかったと思いますし、管理職になっていなかったら別の道を歩んだだけかもしれません。そういう意味ではいまの若者たちが管理職になりたくないというのも選択肢としてはあるのではないかと感じています。但し、「管理職」というわずらわしさから逃げているだけだとしたら、もう少し考える余地があるのではないでしょうか。なぜなら、キャリアは一本道ではないけれども、「10年後の自分をどう描くか」という「Hope」は常に持っているべきだと思うからです。キャリアアップの意義は単なる「出世」ではなくそのための「経験」なのです。そしてその経験に必要な「グロースマインドセット」と「心理的資本」の考え方を紹介します。

心理的資本とは?

心理的資本とは、「Hope(希望)」「Efficacy(自己効力感)」「Resilience(レジリエンス)」「Optimism(楽観)」の4つの心理的リソースのことを指します。これらは、私たちが困難に直面したときに、ポジティブな行動をとるための内面的な力になります。

また、心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した「自己決定理論」や、キャロル・ドゥエックが提唱した「成長マインドセット」も、転職を判断する際に重要な要素となります。

では、これらの考え方を活用して、転職の判断をスクリーニングしてみましょう。

転職を判断するための「心理的資本チェックリスト」

1. Hope(希望):今の環境で未来は切り開けるか?

希望は「目標達成に向けて、複数のルートを見つけ、行動し続ける力」です。もし今の職場で「このまま頑張れば自分の成長につながる」「別の部署への異動などの可能性もある」と思えるなら、転職を急ぐ必要はないかもしれません。

チェックポイント

  • 今の職場でやりたいことができる可能性はあるか?
  • 別の道を探す選択肢(異動やスキルアップ)はないか?
  • 転職しない選択肢も含めて考えたか?

2. Efficacy(自己効力感):転職後に自分は成功できるか?

自己効力感とは「自分には目標を達成する力がある」という自信です。転職することでキャリアが向上するのであればよい決断ですが、「環境を変えればうまくいくはず」という根拠のない期待では、また同じ壁にぶつかる可能性があります。

チェックポイント

  • 自分のスキルや経験を生かせる転職先か?
  • 新しい環境で活躍できる自信があるか?
  • 単なる逃避ではなく、前向きな決断か?

3. Resilience(レジリエンス):今の環境で乗り越えられることはないか?

レジリエンスは「困難に直面しても立ち直る力」です。「上司が合わない」「評価されない」といった理由で転職を考えることもありますが、今の環境で改善できる余地があるなら、まずはその努力をしてみるのも一つの選択です。

チェックポイント

  • 転職の理由は一時的なストレスではないか?
  • 現職で困難を乗り越えた経験はないか?
  • 逃げの転職ではなく、成長のための転職か?

4. Optimism(楽観):転職後の未来をポジティブに描けるか?

楽観とは「将来に対して前向きに考える力」です。転職することで「どんな可能性が開けるのか」「どんな未来が待っているのか」をリアルにイメージできるかどうかが重要です。

チェックポイント

  • 転職後の働き方や環境を具体的にイメージできるか?
  • 「今より良くなる根拠」があるか?
  • 転職後の不安よりも期待のほうが大きいか?

心理的資本以外にも「自己決定理論」や「成長マインドセット」を活用する

自己決定理論:転職の決断は本当に「自分の意志」か?

自己決定理論によると、人間は以下の3つの要素が満たされると高いモチベーションを発揮できます。

  1. 自律性(Autonomy):「自分で決めた」と思えるか?
  2. 有能感(Competence):「転職後も自分の力を発揮できる」と思えるか?
  3. 関係性(Relatedness):「新しい職場で良好な人間関係を築ける」と思えるか?

成長マインドセット:転職によって自分は成長できるか?

転職を「成功するか失敗するか」ではなく、「成長の機会」と捉えられるかが大切です。「うまくいかなかったらどうしよう」ではなく、「新しい環境で学び、スキルを磨こう」と考えられるなら、転職は良い選択になるでしょう。

結論:「心理的資本」を活用すれば、転職の後悔を減らせる

転職を決める前に、感情的な判断ではなく、心理的資本の視点から自分の思考をチェックすることで、後悔のない選択ができます。

✅ Hope(希望) → 「今の環境で成長できる可能性はないか?」

✅ Efficacy(自己効力感) → 「転職先で活躍できる自信があるか?」

✅ Resilience(レジリエンス) → 「今の困難を乗り越えられる方法はないか?」

✅ Optimism(楽観) → 「転職後の未来をポジティブに描けるか?」

これらを満たしているなら、転職は前向きな選択となり得ます。しかし、単なる「感情的な逃げ」なら、一度立ち止まり、思考を整理することが重要です。

「転職するか悩んでいる」という方は、ぜひ一度、この視点で自分を振り返ってみてください。

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「心理的資本」を始めよう!内なる「HERO」に出合うとき
「心理学」と「経営学」の融合から生まれた「心理的資本」を知ろう!最近「心理的資本」(Psychology Capital)という言葉をよく耳にするようになりました。略して「PsyCap」(サイキャップ)とも言われます。「Hope」「Efficacy」「Resilience」「Optimism」の4つのリソースが「心理的資本」の中身です。それぞれの頭文字をとって「HERO」と呼ばれます。「心理的資本」は「心理」という言葉が使われていますが、特に経営学や組織論の分野で見かけることが増えました。「人材マネジメント」や「キャリア形成」に欠かせない概念として注目されています。

 

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