転職を考えるとき、多くの人は「いまの職場が嫌だ」「上司に腹が立った」「評価されない」といったその時のネガティブな感情に突き動かされがちです。
しかし、その決断は本当に正しいのでしょうか?
一時の「感情」に流されて転職を決めてしまうと、後になって「思ったより条件が悪かった」「前職のほうがよかった」と後悔するケースが少なくありません。
一方で、「思考」に基づいて判断した転職は、長期的に見ても納得感があり、後悔しにくいものになります。
では、どのように「感情」と「思考」を切り分け、冷静に転職を判断すればよいのでしょうか?
そこで役立つのが、「心理的資本(PsyCap)」の視点です。

心理的資本とは?
心理的資本とは、「Hope(希望)」「Efficacy(自己効力感)」「Resilience(レジリエンス)」「Optimism(楽観)」の4つの心理的リソースのことを指します。これらは、私たちが困難に直面したときに、ポジティブな行動をとるための内面的な力になります。
また、心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した「自己決定理論」や、キャロル・ドゥエックが提唱した「成長マインドセット」も、転職を判断する際に重要な要素となります。
では、これらの考え方を活用して、転職の判断をスクリーニングしてみましょう。
転職を判断するための「心理的資本チェックリスト」
1. Hope(希望):今の環境で未来は切り開けるか?
希望は「目標達成に向けて、複数のルートを見つけ、行動し続ける力」です。もし今の職場で「このまま頑張れば自分の成長につながる」「別の部署への異動などの可能性もある」と思えるなら、転職を急ぐ必要はないかもしれません。
チェックポイント
- 今の職場でやりたいことができる可能性はあるか?
- 別の道を探す選択肢(異動やスキルアップ)はないか?
- 転職しない選択肢も含めて考えたか?
2. Efficacy(自己効力感):転職後に自分は成功できるか?
自己効力感とは「自分には目標を達成する力がある」という自信です。転職することでキャリアが向上するのであればよい決断ですが、「環境を変えればうまくいくはず」という根拠のない期待では、また同じ壁にぶつかる可能性があります。
チェックポイント
- 自分のスキルや経験を生かせる転職先か?
- 新しい環境で活躍できる自信があるか?
- 単なる逃避ではなく、前向きな決断か?
3. Resilience(レジリエンス):今の環境で乗り越えられることはないか?
レジリエンスは「困難に直面しても立ち直る力」です。「上司が合わない」「評価されない」といった理由で転職を考えることもありますが、今の環境で改善できる余地があるなら、まずはその努力をしてみるのも一つの選択です。
チェックポイント
- 転職の理由は一時的なストレスではないか?
- 現職で困難を乗り越えた経験はないか?
- 逃げの転職ではなく、成長のための転職か?
4. Optimism(楽観):転職後の未来をポジティブに描けるか?
楽観とは「将来に対して前向きに考える力」です。転職することで「どんな可能性が開けるのか」「どんな未来が待っているのか」をリアルにイメージできるかどうかが重要です。
チェックポイント
- 転職後の働き方や環境を具体的にイメージできるか?
- 「今より良くなる根拠」があるか?
- 転職後の不安よりも期待のほうが大きいか?
心理的資本以外にも「自己決定理論」や「成長マインドセット」を活用する
自己決定理論:転職の決断は本当に「自分の意志」か?
自己決定理論によると、人間は以下の3つの要素が満たされると高いモチベーションを発揮できます。
- 自律性(Autonomy):「自分で決めた」と思えるか?
- 有能感(Competence):「転職後も自分の力を発揮できる」と思えるか?
- 関係性(Relatedness):「新しい職場で良好な人間関係を築ける」と思えるか?
成長マインドセット:転職によって自分は成長できるか?
転職を「成功するか失敗するか」ではなく、「成長の機会」と捉えられるかが大切です。「うまくいかなかったらどうしよう」ではなく、「新しい環境で学び、スキルを磨こう」と考えられるなら、転職は良い選択になるでしょう。
結論:「心理的資本」を活用すれば、転職の後悔を減らせる
転職を決める前に、感情的な判断ではなく、心理的資本の視点から自分の思考をチェックすることで、後悔のない選択ができます。
✅ Hope(希望) → 「今の環境で成長できる可能性はないか?」
✅ Efficacy(自己効力感) → 「転職先で活躍できる自信があるか?」
✅ Resilience(レジリエンス) → 「今の困難を乗り越えられる方法はないか?」
✅ Optimism(楽観) → 「転職後の未来をポジティブに描けるか?」
これらを満たしているなら、転職は前向きな選択となり得ます。しかし、単なる「感情的な逃げ」なら、一度立ち止まり、思考を整理することが重要です。
「転職するか悩んでいる」という方は、ぜひ一度、この視点で自分を振り返ってみてください。
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