高齢者には高齢者独自のウェルビーイングがある
定年退職は、誰にとっても一つの大きな節目であり、次の人生に向かうマインドセットのタイミングですね。
かつての私は、63歳で退職を迎えた時、自分の役割を終えたような感覚を抱え、これからの人生に漠然とした不安を感じていました。
しかし、退職してから10年が経った今、思索の時間が増え、読書を深め、かつてよりも心が豊かであることを実感しています。
もちろん、脳の衰えは否定できません。
記憶力は低下し、注意力が散漫になり、自分の行動(何でこんなことをしたんだろう?)に自信が持てないことが数多くあります。
それでも私は「脳は老いても、心は老いない」という信条を持ち続けています。
そして、この信条の下、「心理的資本(PsyCap)」を活用することで、自分自身の人生をより前向きに、充実したものに変えています。
今回は、この考え方を科学的なエビデンスと共にご紹介し、60代、70代の皆さんに人生を豊かにするヒントをお伝えしたいと思います。
「脳の可塑性」:老いても変化し続ける脳の力
「脳は老いる」と一般的に考えられますが、実は脳は生涯を通じて変化し続ける能力を持っているそうです。
これを「脳の可塑性(ニューロプラスティシティ)」と呼ぶそうです。
ある研究によれば、新しいスキルを学んだり、読書や創造的な活動をしたりすることで、脳内の神経回路は新たに形成・強化されることがわかっているとのこと。(Park & Reuter-Lorenz, 2009)
つまり、年齢を重ねたとしても、私たちの脳は新しいことを吸収し、適応する力を持っているのです。
この研究だけでも何だか気持ちが前向きになりませんか?
例えば、私が「心理的資本開発指導士(PsyCap Master)」の資格取得を目指した時も、最初は「もう学び直しなんて無理では」と感じていましたが、学ぶプロセスの中で脳が活性化し、自信を取り戻す感覚を覚えました。
このように、「脳の可塑性」を意識することは、「心は老いない」という信条を支える重要な要素です。
「心理的ウェルビーイング」:老年期の幸福感を支える鍵
また「心理的ウェルビーイング」とは、自分の人生に満足し、成長していると感じられる心の状態を指します。
特に年齢を重ねるにつれ、外的な成功よりも内面的な満足感や感情の成熟がウェルビーイングに大きく寄与することがわかっています。
カリフォルニア大学の研究(Carstensen, 1999)によると、高齢者は若年者よりもポジティブな感情を感じやすく、感情調整能力が向上していることが示されているとのことです。
これは、「社会情動的選択理論」によるもので、人生の残り時間を意識することで、より重要な人間関係やポジティブな体験に注意を向ける傾向が強まるためだそうです。
また、「心理的資本(PsyCap)」の構成要素である「Hope」や「Optimism」は、ウェルビーイングをさらに高める重要な役割を果たします。
「心理的資本」で実現するウェルビーイングな人生
「心理的資本」は人材マネジメントやキャリア形成に効果を発揮すると言われていますが、究極的には人生のウェルビーイングに貢献する概念なのです。
「心理的資本」の4つのリソース「HERO」が将来に向かう「心のエンジン」になります。
Hope(希望、目標):未来を描き続ける力
「Hope」とは、「未来は良くなる」と信じる力です。
どんなに小さなことでも、新しい目標を持つことが「Hope」の源になります。
例えば、私は退職後に読書量を増やし、新しい学びを始めることで「Hope」を見出しました。
このように、小さな挑戦でも人生における「希望の灯」をともすことができます
Efficacy(効力感、自信):自分にできると信じる力
自己効力感とは、「自分にはやり遂げる力がある」と信じる感覚です。
例えば私は「心理的資本開発指導士」の資格取得という挑戦を通じて、小さな成功体験を積み重ねることで「Efficacy」を育てました。
皆さんも、一歩ずつ小さな成功を積み重ねることで、この感覚を高めることができるはずです。
Resilience(レジリエンス):困難を乗り越える力
「Resilience」は、逆境を克服し、成長する力です。
退職後の生活では、経済的な困難や健康上の課題もありましたが、私は家族のサポートを受けながら、週末にはエアロビクスやフットサルをすることで、心と身体の健康を維持しています。
周りのサポートや身体的活動は、「Resilience」を高める有効な手段です。
Optimism(現実的な楽観力):ポジティブな視点を持つ力
「Optimism」は、ポジティブな未来を信じる力です。
年齢を重ねると、失敗や衰えに直面することも増えますが、「これもまだまだ成長のための試練」と捉えることで、新たな気づきや将来の可能性を見出せるようになります。
おわりに
私たちは、年齢とともに脳が老いる現実を受け入れつつも、心が老いないことを信じ、成長を続けることができます。
「脳の可塑性」はその科学的な裏付けを与えてくれますし、「心理的ウェルビーイング」は人生をより豊かにするための実践的な道筋を示してくれます。
「心理的資本」を活用し、「Hope」「Efficacy」「Resilience」「Optimism」を育むことで、私たちはいつでもウェルビーイングな人生を送ることができるのではないでしょうか。
「脳は老いても、心は老いない」という信条を共有しながら、皆さんの人生が新たな可能性で満ちたものになるよう一緒に歩き続けましょう!
(ホリシン)
↓「心理的資本」の概要はこちら↓
コメント