1on1ミーティングが生まれた背景と目的
現在多くの企業で導入されている「1on1ミーティング」は、アメリカのシリコンバレー企業での実践が注目され、日本でも広がりを見せてきました。
もともとは「部下のモチベーションや成長を支援する」ことを目的とした取り組みであり、単なる業務進捗の確認ではなく、上司と部下が対話を通じて信頼関係を築く場とされています。
特に近年では、世代間ギャップやリモートワークの普及によって、従来のような“日常的な雑談や相談”が減少しました。
その代替として「1on1」が、心理的安全性を高める仕組みとして重要視されているのです。
「評価面談」との違いは?
ここでしばしば混同されるのが「人事評価面談」です。
- 評価面談
→ 人事制度に基づき、成果や行動を評価・フィードバックする場。 - 1on1ミーティング
→ 部下の悩みや成長の方向性を理解し、サポートする場。
つまり管理者側から見ると、評価面談は「結果の確認」、1on1は「未来への支援」と言えるでしょう。
「心理的資本(Psychological Capital)」との関係
「心理的資本(PsyCap)」とは、アメリカの経営学者ルーサンスらが提唱した比較的新しい概念で、「人的資本」「社会関係資本」を支える3つ目の資本として人材マネジメントの世界で注目されています。

「心理的資本」は以下の4つの心理的リソースで構成されています。
- Hope(希望):目標達成に向けて、ルートを描き挑戦する力
- Efficacy(自己効力感):自分ならできるという自信
- Resilience(レジリエンス):困難に立ち向かい、回復する力
- Optimism(楽観性):未来に前向きな期待を持てる力
これらの頭文字をとって「HERO」と呼ばれることもあります。
「心理的資本」を高めることは、単なるメンタルマネジメントにとどまらず、**人の心そのものを成長させる投資=“心を資本化する”**という考え方につながります。
つまり「1on1」に「心理的資本」のアプローチを導入することで、部下の「心の資本化」をサポートできるチャンスが生まれます。
1on1の質問に「心理的資本」を取り入れる
一般的な1on1では上司の「傾聴」を基本にいくつかの定型的な「質問」で場づくりをします。
例えば、
- 最近、何か新しいことに挑戦しましたか?
- 最近、体調はいかがですか?
- 今後、どのようなスキルを身につけていきたいですか?
- 業務の改善点や、もっと良くできると思うことはありますか?
ここに「心理的資本」を意識した質問を加えることで、部下が自ら気づき、自ら道を選ぶことを促す関わり方ができます。つまり「心理的資本」の強化と組み合わせることで、単なる相談の場ではなく「心の成長の場」に変わります。
さらに有効なのが、「心理的資本測定ツール」の活用です。
Be&Do社の「HEROIC」などの測定ツールを使うことで、部下の「心理的資本」の状態を数値として把握できるので、1on1ミーティングでこの結果を参考にしながら「心を資本化する対話」を行うことが可能になります。

たとえば:
- Hope(希望)が低めの社員 → 「今後挑戦してみたいことは?」「達成したい未来像を一緒に描こうか」
- Efficacy(自己効力感)が低め の社員→ 「どんな小さな成功体験を積めそう?」「自分の強みを活かせる場面はどこにある?」
- Resilience(レジリエンス)が低めの社員 → 「最近つらかった出来事から何を学べた?」「次に活かせそうな工夫はある?」
- Optimism(楽観性)が低めの社員 → 「この経験が将来どんな意味を持つと思う?」「ポジティブに捉えられる部分は?」
このように「心理的資本測定ツール」を活用し、部下の「心理的資本」の状態に即した質問を行うことで、“心を資本化する”実践的な1on1が可能になります。
まとめ ― 1on1を「心の投資」の場へ
「1on1ミーティング」は、単なる業務確認の時間ではなく、部下の心を育てる貴重な機会です。
「心理的資本」の概念やHEROICのような測定ツールを組み合わせることで、部下の心の成長=心を資本化することが可能になります。
企業にとっても、個人にとっても、「心理的資本」の向上は未来の競争力に直結します。
ぜひ次の「1on1」から「心への投資」を意識してみてはいかがでしょうか。

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